「エネルギー業界の研究をやりたいんだけど、どういう情報を集めればいいの?」
「そもそもエネルギー業界ってどんなビジネスモデルなんだろう?」
「エネルギー業界って今後どうなるの?」
とあなたも思っているのではないでしょうか?
エネルギー業界と一口にいっても、それは様々な業界から成り立っているというものでもあります。
それぞれの業界知識がなければエネルギー業界全体を知ることはできません。
そこでここではエネルギー業界について細かく分析し、紹介していきたいと思います。
エネルギー業界に就職、転職を考えている人はぜひしっかりと理解をしていきましょう。
この記事の登場人物
富田:理工学部の3年生。自己主張は苦手だが心根は優しい草食系男子。メーカーを志望して就活をしている。
春山:経済学部の3年生。あだ名はハルちゃん。明るくハキハキしていて「考えるより動け!」の行動派。母子家庭出身で、化粧品や日用品など女性を対象とした仕事に就きたいと考えている。
白河:社会人3年目のヘッドハンター。ホワイトアカデミー在学中に内定をもらった東証一部の人材系企業で勤務。ホワイトアカデミーとは、特別講師という形で現在も付き合いが続いている。
業界構造
エネルギー業界は人々の日常生活や生産活動を根底から支えるインフラ産業ですので、就職活動生からも人気の業界となっています。
そんなエネルギー業界は大きく分類すると「電力」「ガス」「石油」の3つに分けることができます。
電力とガスに関しては国内に競合する企業自体が少なく、石油は海外からの影響が特に強いために激しく競合がある業界でもあります。
労働者からの視点では全体的に離職率は低く、安定して昇給していく印象です。
しかし、今後は電力やガスの小売自由化が進んでいくこと石や油資源から新しいエネルギーへの変化、再生可能エネルギーへの関心など、かなり業界全体に大きな変化が起こっていくことが予測されています。
電力業界の構造
電力業界は、発電、送電、変電、配電、小売によって成り立っています。
電力業界では電力の小売自由化が普及してきていることから、さらなる国内での競争が激しくなっていくと考えられています。
また、発電部門では安全性などから原子力発電から火力発電へとシフトしたことが理由となって生産コストが上昇しているために収益が減少しています。
これは火力発電に必要な燃料を輸入に頼っており、それら原材料費が上がっていることが関係しています。
この業界では「電力小売自由化」と「自然環境に配慮した発電」が問題となっていくでしょう。
ガス業界の構造
ガス業界は都市ガスやプロパンガスを家庭や工場などにガスを安定して供給することが主な仕事です。
都市ガスは天然ガスを使って、プロパンガスは液化石油ガスを使ってそれぞれ供給されます。
また近年ではガスを使っての発電という事業が起こってきています。電力の小売自由化の際にも大きく行動したのはガス会社でした。
これからガス業界に就職を考えている人はガスと電力との関係性を調べておくと良いでしょう。
石油業界の構造
石油をガソリンなどの燃料として供給する企業と、石油化学を元としてプラスチックや合成繊維などの石油化学製品を作っている企業があります。
ただ石油資源は数十年のうちに枯渇するとされているために、再生可能エネルギーへの変換など事業を幅広く展開している企業が増加しています。
新しい事業を開拓していく精神が求められていく業界だと言えるでしょう。
現状や動向
現在エネルギー業界の業界全体の規模は45兆2,882億円となっています。
これは国内のあらゆる業界の中で最大の規模です。
エネルギー業界では、
- 生産・製造部門
- 営業・販売促進部門
- 保守・管理部門
- 設備管理部門
- 施工管理部門
などから成り立っています。
製造系、営業系、事務系などすべての職種がありますので、就職する場合はどの部門を希望するかをはっきりしておくことが重要です。
そしてそれぞれの業界の市場規模を見ていきます。
市場規模
電力業界は20兆2400億円の規模を持ち、エネルギー業界のなかでも最大規模を誇っています。
電力の生産規模も年々増加しており、これからもさらなる増加が見込まれています。
以下はその変化をグラフにしたものです。
富士経済マーケティングより引用(https://www.fuji-keizai.co.jp/market/18008.html)
電力業界と比べるとガス業界はそれほどの規模ではありません。
業界規模も4兆7,463億円となっており、電力業界の4分の1ほどです。
その生産規模を見てもそれほど大きな変化がないことがわかります。
富士経済マーケティングより引用(https://www.fuji-keizai.co.jp/market/18008.html)
石油業界は20兆3,019億円という規模を誇っており、平均給与についても高い水準を誇っているのですが、以下のグラフを見てもわかるようにこれからその需要は減っていくことが予測されています。
どれだけスムーズに新しいエネルギーに変換していけるかが問題となっています。
資源エネルギー庁より引用(http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2017html/1-3-3.html)
ランキング
まずは「国内の電力業界の売上高ランキング」を見ていきます。
電力業界 売上高ランキング (平成27-28年)
- 1位:東京電力HD 6兆699億円
- 2位:関西電力 3兆2459億円
- 3位:中部電力 2兆8540億円
- 4位:東北電力 2兆955億円
- 5位:九州電力 1兆8356億円
- 6位:中国電力 1兆2315億円
- 7位:J-POWER 7800億円
- 8位:北海道電力 7241億円
- 9位:四国電力 6540億円
- 10位:北陸電力 5445億円
- 11位:沖縄電力 1822億円
- 12位:イーレックス 228億円
続いて海外の電力会社との比較です。
各社アニュアルレポートより(https://www.kokuyo.co.jp/ir/library/annualreport.html)
次に「国内のガス会社の売上高ランキング」です。
ガス業界 売上高ランキング (平成27-28年)
- 1位:東京ガス 1兆8846億円
- 2位:大阪ガス 1兆3220億円
- 3位:東邦ガス 4798億円
- 4位:西部ガス 1903億円
- 5位:静岡ガス 1460億円
- 6位:日本瓦斯 1146億円
- 7位:京葉瓦斯 948億円
- 8位:北海道ガス 931億円
- 9位:TOKAIホールディングス 807億円
- 10位:広島ガス 763億円
そして「世界のガス会社、エネルギー会社の売上高ランキング」です。
- 1位:エクソンモービル(アメリカ)
- 2位:韓国電力公社(韓国)
- 3位:ガスプロム(ロシア)
- 4位:フィリップス66(アメリカ)
- 5位:バレロ・エナジー(アメリカ)
- 6位:ルコイル(ロシア)
- 7位:ロスネフチ(ロシア)
- 8位:リライアンス・インダストリーズ(インド)
- 9位:スルグトネフテガス(ロシア)
- 10位:マラソン・ペトロリアム(アメリカ)
ロシアビジネスサイトより引用(https://jp.rbth.com/business/2016/09/27/633487)
最後に「国内の石油業界 売上高ランキング」です。
石油業界 売上高ランキング (平成27-28年)
- 1位:JXホールディングス 7兆1586億円
- 2位:出光興産 3兆5702億円
- 3位:東燃ゼネラル石油 2兆6278億円
- 4位:コスモエネルギーHD 2兆2443億円
- 5位:昭和シェル石油 2兆1776億円
- 6位:国際石油開発帝石 1兆95億円
- 7位:三愛石油 7466億円
- 8位:富士石油 4255億円
- 9位:石油資源開発 2403億円
- 10位:日新商事 609億円
- 11位:富士興産 501億円
- 12位:東亜石油 333億円
こちらは「海外の石油業界 売上高ランキング」です。
- 1位:エクソンモービル(XOM.N) (アメリカ)3586億アメリカドル
- 2位:ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L)(英蘭)3527億5000万アメリカドル
- 3位:BP(BP.L)(イギリス)2819億4200万アメリカドル
- 4位:シェブロン(CVX.N)(アメリカ)2039億7000万アメリカドル
- 5位:トタル(TOTF.PA)(フランス)2000億3600万アメリカドル
- 6位:コノコフィリップス(COP.N)(アメリカ)1715億アメリカドル
- 7位:中国石油化工(0386.HK)6000028.SS(中国)1607億1400万アメリカドル
- 8位:ENI(ENI.MI)(イタリア)1273億4400万アメリカドル
- 9位:新日石5001.T+新日鉱HD5016.T(日本)1191億8800万アメリカドル
- 10位:中国石油天然気(0857.HK)(PTR.N)(中国)1143億2400万アメリカドル
ロイター社より引用(https://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-35259020081204)
収入と安定性
エネルギー業界の平均年収や安定性などをそれぞれの業界ごとに見ていきたいと思います。
電力業界の収入と安定性
電力業界は仕事をするにはかなりの専門性が求められます。
そのために技術や知識を身に着けている必要があり、資格や免許を取得している人が多いのが特徴です。
どの業界でもそうですが、特にこの業界は資格を持っていることで「資格手当」が発生してくることが多く、高い給料を得るためには資格や免許はかかせません。
また、現場に限らず管理者になっていくにも広く仕事内容を理解している必要があるので資格は必ず取得しておきましょう。
特に「第三種電気主任技術者」のような難しい資格を取得していると給料、出世、独立など、どの道に進んでいくにしても有利になります。
電力業界は現場の人の割合も多くいるために平均年収で考えると400万円台と決して高くはなっていません。
ただし離職率が低く、長くいると確実に給料が上がっていく業界でもありますので勤続年数とともに年収も向上していくでしょう。
ガス業界の収入と安定性
大手ガス会社の平均年収は600万円ほどで順調に昇進をしていけば約1000万円ほどになると言われています。
基本的には担当しているエリアが決まっているために、他社との激しい競争というものを考えなくても良いというメリットがありました。
しかし、ガスも小売自由化の時代を迎えたことによって顧客確保のための営業職の重要性が上がってきています。
技術職や営業職が平均年収700万円ほどになっているのにはそういった理由も関係していると言えるでしょう。
また、ガスの小売自由化によって新しくこの業界に参入しようとしてくる会社が大手のガス会社などからヘッドハンティングを行っていることがあります。
この場合はかなりの年収が期待できるでしょう。
全体的に見るとやはりエネルギー業界は絶対的に必要なインフラ産業であるだけに安定性は高くなっていることは間違いありません。
石油業界の収入と安定性
安定していると言われる業界のエネルギー業界ですが、近年大きな変化が押し寄せているのが石油業界です。
地球温暖化の問題や石油枯渇に向けての代替エネルギーの必要性など大きな変化が迫られているのです。
そのために新しい視点を持つ社員が重宝されており、柔軟な発想や対応力が求められるでしょう。
また、海外との関係が深い業界ですのでグローバルな人材であることも条件になってきます。
それだけに平均年収は高めに設定されており、500万円を超えている企業がほとんどとなっています。
業界の課題
日常生活や生産活動に絶対的に必要であるということから高い安定性を誇ってきたエネルギー業界ですが、近年では大きな課題がいくつも出てきています。
まず地球温暖化などの自然環境への影響が大きい業界だけに「自然に優しく、しかも安定した大きなエネルギー」の開発が期待されていることです。
自然に優しいと言えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電などの発電がありますが、天候などによって発電量が安定せずに設置する設備費も高いという課題もあります。
また、石油が数十年のうちに枯渇すると言われていることから石油の需要はどんどん減少していくという予測が立てられており、代替エネルギーへの移行も行わなければなりません。
さらに電気やガスの小売自由化が進んでいることから今までにはあまりなかった「顧客獲得」のための活動が必要になってきています。
こういった変化にどれだけ早く確実に対応していけるかが企業として、業界として生き残っていけるかの分かれ目になるでしょう。
業界のニュース
変化が多いエネルギー業界だけにそのときのニュースを正確に押さえておく必要性があります。
テレビやインターネットを通じて正しい情報を収集していきましょう。
ここでは最近のニュースをいくつか紹介していきます。
ニュース①~サウジアラビア揺れる王政~
世界の石油の価格は中東の情勢によって大きく変動します。
これは中東諸国が世界の中でも多くの石油埋蔵量と石油輸出量を誇っているために大きく石油輸入国に影響を与えるからです。
特にその中でも影響力が強いサウジアラビアが最近揺れていることによって、日本の石油関連商品の値段にも影響を与えています。
次期国王と称されているムハンマド皇太子の強気な政策によって国政が安定していません。
エネルギー業界としてはサウジアラビアを中心とする中東諸国の情勢には常にチェックが必要だと言えます。
ニュース②~アジア諸国の躍進~
日本は資源輸入国であるために資源輸出国で情勢が変わると日本にも強く影響があります。
例えば電力業界の火力発電が苦戦しているのは原材料の高騰が原因です。
中国をはじめとするアジア諸国から輸入していたこれらの資源ですが、その資源輸出国であったアジア諸国が自国の工業や経済の発展により資源を自国で消費するようになってきているのです。
そうするとどうしても原材料費は上がってしまうということになります。
これをチャンスととらえるかピンチととらえるかによって企業の業績は変わっていくでしょう。
原材料費が高騰するので苦戦すると考える場合もありますし、エネルギーを必要としているのであればビジネスチャンスだととらえる考え方もあるのです。
この現状をどうとらえるかがカギになっていくと言えるでしょう。
ニュース③~電力とガスの小売自由化~
今まで決まった会社しか販売することができなかった電力やガスですが、これらの小売自由化が始まったことで大きな動きがあります。
電力の小売りに新たに参入してくる企業も出てきていますし、「ガス会社が電気も売る」「電力会社がガスも売る」ということも当たり前に起こっています。
また、これまでにない顧客獲得サービスが始まっている現状もあります。
これらもまだ始まったばかりのサービスですので、これからの動きにも目が離せません。
志望動機を書く時の2つのポイント
色々と変化が起こっているエネルギー業界ですが、やはり業界としては安定したインフラ産業であることには違いはありません。
それだけに常に人気の就職先となっている業界でもあります。
そこでここでは、この業界を志望する際にポイントとなる点を紹介していきます。
ポイント①海外出張、海外赴任が可能か
エネルギー業界では取引先が海外ということも非常に多く、現地に出張に行ったり、現地に赴任するということは頻繁にあります。
それを苦にしないかどうかということがまずポイントになります。
海外に目を向けることができるか、海外に行くことを肯定的に考えられるか、グローバルな視点を持っているかということはエネルギー業界では基本となると言えるでしょう。
ポイント②柔軟な対応力
基本的には安定した仕事が多いエネルギー業界ですが、「自然災害」「事故」などが起こったときは別です。
生活に密着している電気・ガス・石油を扱っているために、まさにライフラインを管理している業界でもあるのです。
そういったときにどれだけ柔軟に素早く正確に対応できるかどうかは非常に重要なポイントとなります。
付近の停電を早く解除できるかどうかはこの業界で働く人たちにかかっているという自覚を持てるかどうかだと言えます。
それを志望動機としてアピールできればかなりの武器になります。
ホワイト企業はコレだ!
業界によってはその業界全体がブラックというところもあるのが実際なのです。
そんなエネルギー業界のなかでも特にホワイトだという評判の企業を3つ紹介していきます。
ホワイト企業①東京ガス
有給取得を積極的に推し進めていることや20時以降の勤務の原則禁止、育児休暇などからのスムーズな復帰政策などとにかく「働きやすい職場」を作ろうとしている姿勢が評価されています。
また、2016年の電力小売自由化の際には大きく契約件数を伸ばしたという実績も光っています。
国内、国外を問わず色々な仕事を行うチャンスがあるということも高評価のポイントとなっています。
ホワイト企業②JXエネルギー株式会社
「自分が行う業務に全力を捧げることができる」環境となっているという声が多い会社です。
各部署ごとに明確な仕事内容と目標があるために、不必要なことに関わらずに自分の仕事に集中できるというのです。
この仕事に関するポイントで非常に高得点となっている企業です。
ホワイト企業③大阪ガス
オフィスのフリーアドレス化、ペーパーレス化、サテライトオフィスの設置といった職場環境の整備を進めていることからもわかるように「働きやすい職場」となっています。
社員の平均勤続年数が19年を超えていることや、離職率が非常に低いということもその職場環境が想像できます。
基本的には定時に退社する社員が多いということや、給与やボーナスにも満足点をつけている人が多く、まさに「ホワイト企業」と言えるでしょう。
業界の今後や将来
今後と将来①~他の企業の参入と提携~
エネルギー業界は電力やガスの小売自由化や代替エネルギーの開発などもあって新規企業の参入がどんどんと増えています。
また、そういった企業との業務提携やコラボ戦略も進んでいるということがあります。
大阪ガスなどは積極的にそういった提携を進めて業績を上げることにつなげることに成功しています。
これからは外国からの企業の参入も予測されていますので、そういった企業の参入がさらなる変化をもたらすことが予想されているのです。
今後と将来②~総合エネルギー企業への進化~
電力やガスの小売自由化は新規企業の参入だけではなく、既存の企業にも変化をもたらしています。
価格競争が進む中で専門に行っていた企業が色々な部門を持つ総合的な企業へと成長することが多くあるために今後エネルギー業界にそういった波が押し寄せることが予想されています。
これからはそうして力をつけた総合エネルギー企業が海外へも進出していくでしょう。
今後と将来③~他業種の技術の進歩導入~
技術の進歩は他業種でも日々進んでいます。
そうした進んだ技術の導入によってエネルギー業界のさらなる発展も起こっていきます。
例えば「ドローン」による撮影機能によって鉄塔や送電線、ダムの周囲などの点検や純志を行うことができます。
これは実際に人が行うよりもはるかに安全で迅速な方法となっています。
火力発電所においてIoTの活用による保守業務の効率化や運転効率の最適化への取り組みはすでに始まっています。
こういった進歩した技術の導入はますます進められていくでしょう。
変化の波を押さえよう
絶対的に安定したインフラ産業であったエネルギー業界も、近年では大きな変化の波が起こっています。
そういった情報を確実に押さえておき、対応力を高めていくことがエネルギー業界で働くために必要なことなのです。