原体験とキャリアの関係とは?専門家が徹底解説!

原体験(formative experience)とは、記憶の底にいつまでも残り、その人に何らかの形で残り続ける幼少期の経験を意味します。

仮に、「幼少期に地球温暖化の現象を眼の前で見て、そこから環境系の学部に進学、最終的に環境省に努めることになりました」という人がいたとします。

この場合は「地球温暖化の現象を眼の前で見た」ということがその人の原体験となります。

就活で志望動機を話す際に、「なぜですか?」と質問攻めにあう人は多いと思いますが、その質問の最後の砦となるのがこの原体験です。

使い方によっては選考をかなり有利に進めることができます。

しかしこの原体験、昔のことでもう覚えていないという人もいますよね。

そこでこの記事では、あなたの原体験を掘り起こし、それを仕事や就職活動で活かす方法についてお伝えします。

それだけでなく、原体験と天職の関係についても言及。

キャリアの専門家として数百人の学生と接してきたからこそわかる原体験の活かし方を活用してください。

この記事が就活生並びに親御さんのお役に立てることを祈念しております。

この記事を書いた人:竹内健登

竹内校長の写真就活塾ホワイトアカデミー校長。デロイトトーマツグループの人材戦略コンサルタントを経て現在は就活コンサルタントとして活躍。

数学検定1級保持者で東京大学工学部卒にもかかわらず、自身の就活に失敗し就職留年した経験から企業の人材戦略の道へ。

新卒の学生が一流企業に内定するための独自の方法論と、3年後離職率・OpenWorkでの評価・帝国データバンクの評点を用いた客観的視点から日夜ホワイト企業を研究。

子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法研究内容を自社メディアで掲載したところ、就活生や親御様の間で話題となり、月間で35万PVを達成した。

現在も、ホワイト企業からの内定が1件も得られなければ授業料を全額返金という方針で、上位大学だけでなく、全国幅広い大学の学生の就活指導を行なっている。

「就職浪人からANAグループに内定した! 」「留年すれすれから日本IBMに内定! 」「指導を受けた次の日から大手企業の面接で落ちなくなった! 」など、喜びの声多数。

著書に「子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法」(日経BP社)がある。

意味は?

そもそも原体験とは何を意味するのでしょうか?

デジタル大辞林によると

その人の思想が固まる前の経験で、以後の思想形成に大きな影響を与えたもの。

とあります。

辞典によっては幼少期のものに限定する表現をしているものもありますが、私自身は原体験はいつになってもできると思います。

というのも、私自身はその人の思想にガツンと言う衝撃を与えることが原体験だと考えているからです。

ですので、就活中、ならびに就職後も原体験は積めると考えています。

それこそ、ファーストキャリアはそれまでの自分が生まれ変わるくらい大きな影響を及ぼしますからね。

具体例

では、原体験の具体例を就職活動に使える形で3つあげたいと思います。順に、

  1. 銀行を志望することになった原体験
  2. 教育業界を志望することになった原体験
  3. エンジニアを志望することになった原体験

について解説していきます。

銀行を志望することになった原体験

この例はあまりポジティブとは言えませんが、半沢直樹がとても良い例なので、それを引用しましょう。

※知らない人のために解説しておきますが、半沢直樹は主人公の半沢が銀行で悪い上司をどんどん蹴散らし、最終的に自分の父を殺すことになった銀行員に復讐をするという話です。

半沢直樹はドラマの第1話で志望動機を話ししていますが、その原体験が非常に強烈です。

半沢「この産業中央銀行で働くことは、私の夢でした」

面接官「いや、しかし銀行はうちだけではないでしょう」

半沢「いえ、こちらでなければダメなんです。実家が、小さな会社をやっております。私が中学の時、取引先が倒産して、うちの会社が潰れる寸前まで追い詰められました。

なんとかします、なんとかします。そういって必死に頭をさげる父の姿は、今でも目に焼き付いております。その数日後、父は過労で倒れ、他界しました。

父の死後、メインバンクだった地元の地銀は、いち早く融資を引き上げ、母と従業員を苦しめました。

その時、私たちを救ってくださったのは、それまで付き合い程度しか取引をしていなかった、こちらの産業中央銀行です。御行は、父が残した工業用部品の将来性を正確に見抜き、融資して救ってくださいました。

父の工場は母が引き継ぎ、今でもどうにか続けていくことができております。ですから私は、是非とも御行に入って、その恩返しがしたいと思っております。」

引用:池井戸潤著 TBSドラマ『半沢直樹』第一話冒頭部より

半沢直樹の話を見ていく中で実際には産業中央銀行は半沢の敵だということが発覚しますが、私が言いたいのはそこではありません。

父の死という原体験を基にして、主人公が銀行に入るために慶応大学の経済学部に進学し、最終的に銀行を受けることになったという一貫性が重要なのです。

その一貫性が面接官を納得させる最強のツールであるということは言うまでもないでしょう。

教育業界を志望することになった原体験

続いては、教育業界の事例を掲載します。といっても、これは私の事例です。

私は現在就活塾・就活予備校を経営していますが、その理由は2つの原体験が重なったからでした。

補足しておきますが、就活塾とは、生徒さんにいい会社・いい仕事についてもらって、本人だけでなく、家族から感謝されるのが主な仕事です。

外資系経営コンサル会社出身の身としては、我ながら地味な仕事をしていると思っています。

しかし、この地味な仕事を私は非常に気に入っているだけでなく、極めて重要なものだと確信しています。

なぜなら、私は本当に正しいキャリア形成の仕方や就活の仕方を知らないまま就職活動をしてしまったため、1年間就職浪人をしてしまったからなのです。

これは一つ目の原体験でもあります。

だからこれからうちに来る生徒さんにはそんな失敗をしないでほしい。

そのために少しでも正しい情報を知り、トレーニングをすることで無駄なく最速で最高のファーストキャリアを築いてほしいと思い、この仕事を作りました。

2つ目の原体験は、家庭教師で一番最初に担当した偏差値35でヤンキーの八王子にある公立高校の生徒にありました。

当時の彼はやりたいことがないのはもちろん、人生も詰んでいました。

本人がとりあえず考えていた仕事は美容師。高卒で働くことを考えていたのだからそんなものだと思います。

しかし、家庭教師をやる中で徐々に人生に生き甲斐と目標を持たせた結果、1年間で偏差値は65まで上がり、彼は明治薬科大学という私大の薬学部に入学しました。

そして、最終的に創薬の仕事に彼はついたんです。

つまり、人を殴って不登校にさせていたような人生が人を病気から救うための薬を開発する人生に変わった。

これほど人生に大きな変化をもたらすことができるのが教育だと悟り、そこからずっと教育を生き甲斐としています。

私の場合、原体験は決して幼児期に形成されたものとは言えないと思いますが、それでもこの経験がきっかけとなって今の仕事をするに至ったのです。

エンジニアを志望することになった原体験

これは、私の友人でシステム開発の会社を経営している社長の事例です。

もともとその社長は、6歳の時に父親から「プログラミングをやってみろ」と言われ、12歳の時にはロボコンに出場。

その時に東京大学のパスを取ったそうですが、結局東大には行かずに在学中に会社を起こし、システム開発会社を経営することになったそうです。

今の彼がやりたいことは、「日本全体としてITのレベルを引き上げること」だそうで、そのためにプログラミング教育の事業なども手がけているそうです。

そんな彼の原体験は、間違いなく幼少期に経験したプログラミングでしょう。

基本的に子供は両親の仕事に影響を受けやすいので、それが原体験になることは結構あるようです。

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就活・仕事に及ぼす影響

このように、原体験が仕事に及ぼす影響は非常に大きく、主に3つの観点であなたの進路に影響を及ぼすものと考えられます。

  1. 仕事のやりがい・モチベーションにつながる(離職防止)
  2. 迷った時に立ち返る原点になる(進路決定)
  3. 人を巻き込む力になる(影響力)

です。順に説明していきます。

就活・仕事に及ぼす影響1:離職防止

まず1つ目が、仕事へのモチベーションが高くなることです。

あなたの原体験に沿った仕事ができていれば、「なぜ」仕事をやるのかが明確になりますよね。

人間の脳は、何をやるのかよりも、なぜやるのかによって大きなモチベーションを得ることができるようにできています。

なので、原体験をベースに仕事を選ぶことは仕事のやりがいにつながり、それが離職防止の大きな歯止めになるのです。

近年では入社後に会社選びを後悔した人が4割いるくらいですから、あなたには就活時にそうなって欲しくないですし、仕事をする上でもこの原体験を大事にして高いモチベーションで取り組んでいただきたいと切に願います。

先ほど挙げた教育の事例にある通り、私自身が高いモチベーションで今の仕事を続けられるのは原体験に基づくことをしているからです。

モチベーションに苦労しているなら、ぜひ原体験を思い出してみてください。

就活・仕事に及ぼす影響2:進路決定

人間、迷った時には原点に帰りたくなるものです。

特に、結果が出ない時や燃え尽きた時などは、こう言った原点回帰をしたくなります。

それだけでなく、どの業界を受けるか、どの進路にするのかを考える際にも原体験は重要です。

特に影響力の強い進路には、「人との出会い」や、「何かをしてもらった」というものがあるでしょう。

困っていた時に助けてもらったとか、そういった大きな転機となるような体験は原体験になりやすいです。

先ほどの事例だと半沢直樹がそれにあたります。

原体験をベースにして進路、つまり目指すキャリアのゴールを描いてみることは非常に有意義だと思いますよ。

就活・仕事に及ぼす影響3:影響力

最後が、影響力です。原体験として辛いことがあったりすると、それが人の共感を生み、あなたの影響力を増すことになります。

影響力が上がるとチームを結成したり、会社を起こしたり、はたまた人事の共感を得たりと、あなたの魅力を強化することに大いに役立ちます。

私が内定請負人として就活生の支援をする時にはいつもこの原体験に着目しますが、それは原体験に着目して志望動機を書くことで就活生の魅力を強化することができるからです。

会社としても「こいつは光るものがあるな」という人材をとりたいもの。

原体験はいわば、あなたの中の「光る原石」を発見する作業なのです。

天職との関係

仕事柄、天職(ライフワーク)について聞かれることがあります。

天職とは、あなたが使命感を持って取り組める仕事のことです。

何が天職になるのかは人によって違います。

まだやり残したことがあるとか、過去こんなことで苦しんだから同じことで苦しむ人をなくしたいなど、人それぞれです。

私がいつも支援している例だと、原体験→職業理念→強み・適性→天職といったように構築されていく人が多いです。

原体験がきっかけとなり、こんなことをやりたい、ないしはやってあげたいという思いが生まれ、その中で自分にできることや得意なことで貢献の形を決めた結果、天職が定まったという例が結構多いのです。

もしあなたが天職を探しているのであれば、ぜひこの原体験に着目してみてください。

就活での使い方

さて、ここまで原体験とキャリアの関係について書いてきました。

ここからは、この原体験を就活でどう生かすのかについてお伝えしたいと思います。

就活においてはまずは行きたい企業や業種を設定することから始める人が多いと思います。

そういった形で業界や業種を決めたらその業界とあなた自身を結びつける原体験を引っ張り出してください。

そして、「原体験→大学でこれを頑張った→だから御社を志望する→将来的にはこんなことをしたい」といった、一つのストーリーを紡ぐようにしてください。

これは銀のアンカーで言われる、「ロックオン自己分析」と呼ぶものです。

つまり、あなたを企業側に合わせて就活するのです。

もちろん、これだけをやったからといって就活で成功するとは保証できませんが、少なくともやりがいやモチベーションを持って仕事できるようになることは間違いないでしょう。

原体験を大切に

そもそも原体験を検索してこの記事にたどり着いたあなたは、相当センスがある人だと思います。

ぜひキャリアを歩む際にも、子供を育てる際にも、この原体験を大事にしてあげてください。

そうすれば、無理矢理モチベーションを上げる環境に入らなくても自然とモチベーションを保って仕事ができるようになると思います。

また、もし原体験を1人で探るのが難しいなと思ったら、ぜひ就活スクールを活用してみてください!

親身に相談に乗ってくれて、客観的なアドバイスをくれる就活スクールの活用も、原体験を探る上での効果的なやり方の1つです。

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投稿:2018.08.30 | 最終更新:2020.03.05

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