アパレル経営者から学んだ、どこにでもある服を高い価格で売る方法

フラッとアパレルショップに立ち寄ったら思わず大量買いしてしまった経験はありませんか?

この記事では、アパレル店の経営戦略についてマーケティング・セールス・ブランドの3つの観点から解説します。

この記事を書いた人:竹内健登

竹内校長の写真就活塾ホワイトアカデミー校長。デロイトトーマツグループの人材戦略コンサルタントを経て現在は就活コンサルタントとして活躍。

数学検定1級保持者で東京大学工学部卒にもかかわらず、自身の就活に失敗し就職留年した経験から企業の人材戦略の道へ。

新卒の学生が一流企業に内定するための独自の方法論と、3年後離職率・OpenWorkでの評価・帝国データバンクの評点を用いた客観的視点から日夜ホワイト企業を研究。

子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法研究内容を自社メディアで掲載したところ、就活生や親御様の間で話題となり、月間で35万PVを達成した。

現在も、塾生がカリキュラムを消化したものの、ホワイト企業の内定を1社も得られなければ授業料を全額返金という方針で、上位大学だけでなく、全国幅広い大学の学生の就活指導を行なっている。

「就職浪人からANAグループに内定した! 」「留年すれすれから日本IBMに内定! 」「指導を受けた次の日から大手企業の面接で落ちなくなった! 」など、喜びの声多数。

著書に「子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法」(日経BP社)がある。

マーケティング

アパレル店に入る際のお客さんの購買行動をフローで分析すると次のようになります。

  1. お店に入る
  2. 服を見る
  3. いいと思う服を見つけ試着
  4. 購入

①お店に入る

いい服があれば売れると思っている人がよくいますが、それは集客やマーケティングのことを全く分かっていない証拠です。

どんなにいい商品があっても、お客さんがお店に入らなければ絶対に買わないので、まずはお客さんをお店に入れることが必須要件です。

いい服があれば売れるのは既存顧客だけですが、初めて来る人は購入して使っていないので、いい服かが分かりません。

そこで、初めて来る人を店の中に引き込む工夫がたくさんされているのですが、よくある例が、お店の前に目玉商品を格安価格で置いておき、お客さんの目を引き付け足を止めるというものです。

キャッチコピーに似ていますよね。

②服を見る

店頭にある格安商品を見たら、店内にあるおしゃれな服にお客さんの目は移ります。

これが高い利益率を乗せたお店の一番売りたい収益商品ですが、大抵のお客さんがバックエンド商品に目を止めて物色し始めるのです。

毎年、売れた商品をデータで計測し、次の年もそれを売れるように、よく買われる服をきちんとお客がほしくなるように陳列するのです。

③いいなと思って試着

お客さんは自分の価値観に合った服を選び、そこで動きが止まりますが、ここでアパレル店員の出番です。

すかさずお客さんのところに行って他愛もない話をしながら試着を勧めますが、それは試着をするとさらにその商品が欲しくなり成約率が上がるからです。

④購入

試着して服が欲しくなった際に必ず気になるのが価格ですが、お客さんはあの手この手を使って価格を下げようと画策します。

ここで優秀な店員は次のように対応するのです。

「その商品はもう在庫がありませんから、最後の1個なのです。だから値引きには応じられません。代わりにこちらのアクセサリーを付けさせていただきます。」

「その商品は全て海外の職人が手作りで作ってくれたオリジナルのものですから、値引きには応じられません。」

お店の商品が高い理由をきちんと説明することで、中国製でも値引かれずに高付加価値の商品として販売できるのです。

セールス

アパレル店でお客さんが購買する際に店側としてはお客さんの購買単価を上げたいので、優秀な店員は次の2つの手を使って単価を上げにいきます。

①アップセル

お客さんが「これよさそう!」と思った服を手に取り試着をしたいと言い出した際に、お客さんが選んだ服より高いものを追加するのです。

「こちらもお勧めですので、どうぞ1回試着してくださいませ」

この一言でいけますよね。

そうすると、明らかに値段の高いものの方が着心地もルックスもよいので、お客さんは元々買いたいと思っていた商品よりも新しく追加された商品に興味を持つこととなります。

その時点でお客さんの心は揺らいでおり、新しい服が欲しくなっているのです。

あとは、お客さんの予算やライフスタイルを詳細に聞き出し、ベネフィットを伝えセールストークで落とすだけです。

買わないデメリットを伝え、最終的には保証やおまけをつけることで背中を後押しするのです。

②クロスセル

重ね着やトータルコーディネートがこれに当たりますが、1つ商品を購入した際に追加で商品を購入させるのです。

服は全身で自分の世界観や価値観を表現するものですが、店頭で商品を手に取った時、例えばトップスだけだと大抵自分がその時着ているボトムスには合いません。

そこで店員の出番です。

トップスにあうボトムスをお客さんのところに持っていくことでトータルコーディネートし、お客さんにクロスセルが可能になるのです。

この手法がべらぼうにうまいのがcommca(コムサ)です。

おそらくコムサでは社員の営業研修を徹底的に行い、クロスセルを上品に行うことを徹底させています。

私も昔、コムサでスーツのジャケットを買いましたが、元々3万円の買い物だったのが気づくと10万円になっていました。

私の師匠はいつも経費を全然かけない経営上手な方ですが、パーティー用のスーツを買いにコムサに行ったはずが、気づいたらたくさん買って帰ってきていましたので、コロッとクロスセルされたんだろうと思います。

コムサの店員の営業能力は本当に高いですし上品です。

コムサが大手になれた秘訣は営業力にあると言えそうですが、営業研修を考えているのであればコムサに行ってみるといいでしょう。

店員の営業力の高さにびっくりしますよ。

ブランド

アパレル店が売っているのはモノですが、そう捉えるとZARAやGANESHなどの高利益率のお店はその付加価値を正当化できません。

同じような服は必ずどこかにありますし、場合によってはECサイトで安く売られていることもしばしばですから。

では、彼らは何を売っているのか?

それは自分たちの世界観です。

お店によって服の種類や店の雰囲気などが全然違うのは自分のお店の世界観をお客さんにアピールしているからですが、お客さんの価値観と店の世界観がマッチした時、お客さんは商品に惹かれリピート客となります

お店はお客さんが自分の価値観を表現するサポートをしており、そう思えばこそ、店員はお客さんに対して本気でアドバイスできるのです。

服を買うことで手に入る理想の未来を描けるので、多少高い服でもお客さんは買うのです。

このようにして世界観という形で経営理念を打ち出すお店は高い利益率の商品を売ることができるようになりますが、それがブランドなのです。

アパレルショップの販売戦略は周到に組まれている

このように、アパレルショップでは客引きからアップセル・クロスセル、リピーター化まで周到に顧客の導線が敷かれています。

今度アパレルショップに立ち寄る機会があったら、ぜひこの記事の内容を意識してみてくださいね!