就職活動に向けて自分が興味のある業界を研究する必要があることは自明ですよね。しかし、自分がどの業界に興味があるのか、どの業界に向いているのか、そもそもどんな業界があるのか分からない! という方も少なくないはずです。
当記事では、そんなあなたのために、農林水産業界を解説していきたいと思います。
「農林水産業界ってそもそもどんな業界?」
「農林水産業界の動向は?」
「どんな仕事をするの?」
「企業ランキングは?」
などなど、農林水産業界を考える上であなたが知りたくなるような情報を一挙に大公開!
就職活動において必要な内容となっています。ぜひ、就職活動をする際の1つの選択肢として考えてみてくださいね。
この記事での登場人物の紹介
富田:理工学部の大学3年生。自己主張は苦手だが心根は優しい草食系男子。メーカーを志望して就活をしている。
白河:社会人3年目のヘッドハンター。ホワイトアカデミー在学中に内定をもらった東証一部の人材系企業で勤務。ホワイトアカデミーとは、特別講師という形で現在も付き合いが続いている。
そもそも農林水産業界って?
分類
農林水産業界には、農業、林業、水産業の3つの種類があります。
- 農業:お米や野菜、果物などの農作物を育てたり、家畜から肉や乳製品などを収穫したりします。
- 林業:木材やたけのこ、きのこなどを生産したり、山や森の手入れを行います。
- 水産業:漁業と水産加工業の2つに分かれます。漁業は水産物を採捕、水産加工業では缶詰、瓶詰など水産物をもとに食品を製造する事業のことです。
農業や林業などを見ると一次産業的な職種のように見えますが、水産加工業においては養殖などの商品開発やマーケティング、営業などもあり、他の業界とそこまで大きく違いがあるわけではありません。
業界情報
基本的な業界の情報はこちらです。
- 業界規模:1兆9737億円
- 伸び率:+4.2%
- 収益性:+1.4%
- 平均年収:530万円
出典:業界動向Search.com(https://gyokai-search.com/3-suinou.html)
業界規模は主要対象企業11社の売上高の合計を表しています。自動車や広告、ITに比べるとあまり大きくはありません。
しかし、農林水産業界の伸び率がプラスであることを考えると、今後の業界規模はさらに大きくなっていく可能性があるります。業界規模としては小さいですが、安定した業界だと言えますね。
円安や天候などにより規模が左右されるところもありますが、農林水産業界全体的に見れば若干のプラスを記録しています。
平均年収に関して言えば、他の業界と比べればあまり高くはありません。しかし、他の業界に比べて業界内での収入にそこまで差は無いため、その点においては安心ですね。
必見ニュース2選
サンマ漁
産経新聞によると、2018年はサンマの価格が昨年の2割減少し、質も向上しました。しかし、水揚げ量の水準は変わらず低いままです。
原因として挙げられているのは、温暖化による水温の変化です。海の環境が変化することで、稚魚の生育が難しくなってしまったのです。また、サンマの漁場が沿岸から沖合に変化したことで日本での漁が行いにくくなったことも原因のひとつです。
さらに、近年では中国や台湾などが公海で大量に漁獲していることも指摘されています。中国はここ5年で漁獲量を24倍にまで増やしたのです。このような「爆獲り」もサンマの漁獲量が低下した原因です。
サンマなどの大衆魚は資源管理が難しく、サンマの缶詰を生産する加工会社など、サンマが取れなくなることで廃業を強いられる人々も少なくありません。
農林水産業界において、水産資源の確保は重要な課題ですね。有限の資源を使っていることを再認識するとともに、他国との協力により資源を守る活動も必須となります。
日米貿易協定
日本農業新聞によると、日米間ですべての物品を対象とした2国間の貿易協定(TAG)の交渉が始まりました。
農林水産品の関税に関しては、日本は環太平洋連携協定(TPP)で合意した内容が最大限であると主張しており、米国も「それを尊重する」という立場でした。
しかし、最近になって米国は「目標はTPP以上」と宣言しており、双方の主張が対立しています。
TPP以上の内容を容認してしまうと、日米の農林水産業界にも大きな影響を与えかねません。日本の企業を守るためにも、アメリカの言う通りに動くことは避けた方が良いでしょう。
今後の米国政権の出方とそれに対する日本に対応に注目しなければなりませんね。
業界の抱える課題
生産者の高齢化
農林水産省の農業労働に関する統計(http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html)によると農業就業人口は年々減少しており、また、その多くが65歳以上の高齢者が占めています。
現在では、日本の5%にも満たない人口で日本の食料の大半を支えているのが現状です。
これでは近い将来破綻してしまいますね。
農業就業人口が減少している原因のひとつとして、後継ぎがいないことが挙げられます。これまでは子供が農家を継ぐことが一般的でしたが、現代では子供たちが自ら進みたい進路へと進んでいくため、子供が後を継ぐということがなくなってしまいました。また、収入が不安定なため、子供に農業を継いでほしくないと思う親も少なくないようです。
就農者が減ってしまうと、それだけ日本国内で生産できる野菜が減ってしまいます。輸入によりその不足分を補うこともできますが、関税コストなど、他国への食品依存による弊害も出てしまいます。新規の就農者を増やすための支援や、収入が不安定になることを防ぐための対策が求められています。
生鮮食品の値上げ
Bloombergによると、8月の消費者物価指数は北海道や東北の日照不足などより、生鮮食品の価格上昇が顕著でした。9月以降も、西日本や東京を襲った自然災害により価格はさらに上昇すると見込まれています。
日本特有の事象として、自然災害の多発があります。台風や地震などで被害を受けた地域では生鮮食品の生産量が著しく低下し、それが価格の上昇につながるのです。
自然の産物を扱う農林水産業界において、自然災害は死活問題へと直接つながることも少なくありません。魚介類だけでなく、魚を原料とした医薬品や化粧品、栄養食品など、加工食品なども影響を受けてしまいます。
今後さらなる値上げによって農林水産業界が受けるであろうダメージは甚大なものになる可能性があります。
そこで、共同通信によると、農林水産省は10月から、災害時などの不測の事態の場合、農家の減収を穴埋めする「収入保険」の加入申請手続きをスタートさせました。
制度自体は2019年1月からスタートします。既存の農作物共済とは違い、ほぼすべての農作物をさまざまなリスクにおいて補償されます。
これにより、自然災害などにより収入が激減してしまった農家にも一定の収入が入るようになるため、農業におけるリスクが削減され、安心して農業に専念することができるようになりますね。
このように、農林水産業界において国からの補助はかなり重要となります。
職種
農林水産業界で研究職に就くには、高度な知識やスキルだけでなく、大学で行った研究の内容も重要視されます。また、潜水士や小型船舶、食品衛生監視員や食品衛生管理者などの水産系の資格をとることで、就職において有利になる場合があります。
医薬品化学工業
日本水産などでは、魚を原料とした医薬品や栄養食品、化粧品などを製造しています。その過程での研究や製造に携わることができます。
水産を専攻することで、魚に対する専門性が高くなり、企業にとって即戦力になれる可能性もあります。
情報処理
農林水産業界では、数字を使った分析や調査が多く行われます。漁業資源や環境に関する調査を行う上で、情報処理は必須となるため、専門性を生かせる可能性があります。
農林水産業界のイメージとは少し離れていますが、業界においてとても重要な存在です。
環境アセスメント
環境分野での研究を行ってきた人には、環境アセスメントもおすすめです。大規模な開発を行う企業や環境省など、就職先も幅広く、より研究を深く行うことができます。
ランキング一覧!
売上高ランキング
農林素産業界での企業別売り上げランキングがこちら。
1.マルハニチロホールディングス(8,848億円)
子会社や関連企業を通じ、水産事業や食品事業、倉庫物流事業などを行っている会社です。従業員数は約12000人。
2016年からは完全養殖のクロマグロの本格出荷を始めるなど、世界的にも新しいことに挑戦しています。
食品業界全体でも5位にランクインしている、最大手企業です。
2.日本水産(6,371億円)
水産事業、加工事業、物流事業や、医薬品事業、船舶の建設や修繕などを幅広く行っています。従業員数は約10000人。
日本水産という名前だけあって、水産加工食品に強いです。
また、魚を原料とした栄養食品や医薬品などの製造もおこなっています。食品業界全体でも第6位にランクインしています。
3.極洋(2,226億円)
業務用製品の生産、販売を中心としていましたが、2014年からは「シーマルシェ」というブランド名を掲げ、家庭用の冷凍食品事業にも参入しはじめました。従業員数は約12000人。
どの企業も聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。しかし、トップ2つの企業の売り上げが、他企業と比べてかなり大きくなっていますね。このほかにも、ホクト(609億円)やサカナのタネ(587億円)もランクインしています。
売上高とシェア
- 1位:マルハニチロ 8,848億円・44.8%
- 2位:日本水産 6,371億円・32.3%
- 3位:極洋 2,266億円・11.5%
- 4位:ホクト 609億円・3.1%
- 5位:サカタのタネ 587億円・3%
- 6位:カネコ種苗 580億円・2.9%
- 7位:アクシーズ 183億円・0.9%
- 8位:ホクリヨウ 155億円・0.8%
- 9位:秋川牧園 52億円・0.3%
- 10位:ホーブ 44億円・0.2%
業界動向より引用(https://gyokai-search.com/3-suinou.html)
平均年収ランキング
次は、農林水産業界内での企業ごとの年収ランキングです。
1.日本水産(764万円)
2.マルハニチロホールディングス(755万円)
3.極洋(670万円)
やはり売り上げの大きい企業がランクインしてきました。一番平均年収が高いのは日本水産で764万円です。
業界全体の平均年収は530万円と、他の業界の平均年収に比べれば少し低いですが、年収を高めようと思えばかなりいいところまでいけそうですね。
ホワイト企業ランキング
キャリコネでの評価が高い順に並べてみました。
労働時間の満足度、ストレス度の低さ、給与の満足度などを総合したものです。
- 全国農業協同組合連合会(JA農協)☆3.3
- 日本水産☆3.2
- マルハニチロホールディングス☆3
ここでは、JA農協が1位にランクインしています。
大規模な研究所を有していることで研究開発を十分に行える環境が整備されていることや、有給や体調不良による休みの取りやすさ、福利厚生の充実さが評価につながっています。
日本水産は、福利厚生は平均的ですが、仕事量が他企業に比べて多いことがマイナスとなっています。
しかし、仕事量の多さと報酬は比例しており、報酬の多さも他企業と比べるとかなり多めになっているため、バリバリ働いて稼ぎたいという人にはぴったりかもしれませんね。
最善の選択が何であるかを見極めることもとても難しいですよね。
ホワイト企業に入社したい! という願いは誰もが持っています。
しかし、ホワイト企業を選び自分にとって最善の選択をすることはなかなか容易ではありませんよね。
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業界の今後
攻めの農林水産業
農林水産省は、世界の食市場の規模拡大や国内の生活面での変化を見越して、「攻めの農林水産業」を展開し、農林水産業界の強化を目指しています。そこで国は以下3つの戦略を挙げています。
- 需要フロンティア拡大
- 生産から消費までをバリューチェーンとして扱う
- 生産現場の強化
これらを農業界と経済界が連携して行うことで、農業の成長産業化を期待することができます。
例えば、農地の出し手と受け手の間に中間管理機構を整備することで農地を整理することができ、まとまりのある形で農地を活用することができます。
また、日本食をブランド化し、輸出拡大、日本の食文化そのものの海外展開などを強化することで、日本の農林水産業界をさらに活気あるものにしていこうとしています。
最終的な成果目標としては、2020年までに農林水産物、食品の輸出額を4500億円(2012年)から1兆円にまで拡大させることを掲げています。
さらに、医療と食品の連携や、再生可能エネルギーの活用なども進められています。健康に着目した農林水産物、食品の市場を拡大させることで健康で長寿の社会の実現や、新品種、新技術の開発や保護、普及なども重要視されています。
このように、農林水産業界は今、変化の途中にいます。今後さらなる発展と進化を期待することができそうですね。
今後の発展に期待
農林水産業界は私たちの生活をより豊かにするために欠かせない存在で、魅力と面白さに溢れた業界です!
また、これからは「攻めの農林水産業」として農林水産業界全体の発展を見込むことができます。
将来の伸び率もあり、これから就職することで農林水産業の成長を実感しながら働くことができるため、やりがいや楽しさも期待できますね。
ぜひ、農林水産業界への就職も検討してみてください。