「繊維業界に就職したいけど、仕事内容がよく分からない……」
「繊維業界の今の動向が知りたい!」
「繊維業界の平均年収はどのくらいなの?」
「繊維業界のホワイト企業が知りたい!」
繊維業界に興味はあるけど、どんな職業なのか具体的なイメージが湧かないという人は少なくないでしょう。
そこでここでは繊維業界の現状と課題や、年収、ホワイト企業などについて細かく紹介していきたいと思います。
ぜひこの記事を読んで繊維業界への知識を深め、就職活動に役立ててくださいね!
この記事の登場人物
春山:経済学部の3年生。あだ名はハルちゃん。明るくハキハキしていて「考えるより動け!」の行動派。母子家庭出身で、化粧品や日用品など女性を対象とした仕事に就きたいと考えている。
白河:社会人3年目のヘッドハンター。ホワイトアカデミー在学中に内定をもらった東証一部の人材系企業で勤務。ホワイトアカデミーとは、特別講師という形で現在も付き合いが続いている。
繊維業界とは?
繊維業界とは天然繊維や化学繊維を対象とする関連産業のことで、主に紡糸、製糸、紡績、染色、縫製などの工業があげられます。衣類や自動車、医薬品など様々なものに使われており、私たちの生活には欠かせない産業の一つです。
繊維産業は18世紀末からイギリスの産業革命を機に大量生産工業となり、20世紀には日本でも規模を拡大して行きました。戦時中の女性の低賃金労働によって支えられ発展していき、製糸業は国内の経済を大きく支えていました。
現在では天然繊維よりも、パルプを原料とする人工絹糸や再生繊維、合成繊維などの化学繊維が多く使われており、より高性能で高機能な新しい繊維の開発にも注目が集まっています。
繊維業界はこうした製品の開発や製造、販売によって利益を得ている業界のことです。
4つの仕事内容
繊維業界の仕事内容は大きく「商品開発」「研究」「生産・加工」「営業」の4つに分けられます。
商品開発
商品開発では自社の製品や、自動車メーカーやアパレル業界など繊維製品を必要とする顧客と連携を取りながら製品の開発などを行います。
研究
研究では商品に使用する原料や素材などの研究や実験、性能の調査や安全性評価や生産技術の開発などを行います。時代の移り変わりや、顧客のニーズに応えれるような高い技術や日々の努力が求められます。
生産・加工
生産・加工は製品を実際に製造する仕事です。この工程を他社に任せている企業も多く、また現在ではインド、パキスタン、韓国などの海外工場に委任するケースも増えています。
営業
営業では顧客に対して営業、提案、交渉などを行い契約を結んだり、業界についての情報収集を行い自社の成長に繋がるように努めます。顧客の要望を研究や商品開発に伝えることも仕事の一つです。
現状と課題
国内生産の減少
繊維製品は私たちの生活に欠かすことのできない製品です。また他の産業で使用している素材や材料を生産していることから重要度がとても高い産業と言えます。
しかしながら、かつて国内輸出50%を超えていた出荷割合も1995年以降から低下を続け、現在では4〜5%を低迷しています。
また日本繊維産業連盟によると、
国内生産の減少により、国内の繊維事業所数、製造品出荷額とも、1991年比で約4分の1に減少している。http://www.jtf-net.com/news/PDF/170727Jonin/170727Jonin_seni_genjyoukadai.pdf
とも言われています。
海外メーカーの成長
近年では中国の繊維メーカーが急激な成長を遂げており、非常に安価でもある中国製品は現在世界の繊維生産量の50%を超えるシェアを見せています。
また、新たなビジネスモデルとしての挑戦のきっかけと期待されていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)も、2017年のアメリカ離脱により効力を失ってしまいました。
こうした中、日本の繊維メーカーは価格面で非常に不利な状況に立たされていることから従来の製品の見直しを行い性能で勝負する企業もあれば、樹脂や光化学フィルムなど繊維の知識を生かすことのできる非繊維事業へとシフトチェンジを行った企業もあります。
さらに、平成28年には東レがインドにエアバック向け生地の新工場を稼働させるなど大手繊維企業の海外進出も増えており今後の成長が期待されます。
国内繊維業界の今
中国をはじめとした海外メーカーが勢力を握る繊維業界において、国内メーカーは独自性を要する商品に関して強みを持っています。
例えば紙オムツやマスクなど衛生・医療製品などに使われる不織布開発においては、国内の繊維メーカーが投資を続けています。
また東レは韓国での生産能力強化に取り組んでおり、2018年4月には近年アジアでの需要が拡大している「ポリプロピレンスパンボンド(長繊維不織布)」の生産能力がアジアNo.1の17万1000トンに達しました。
東レPPスパンボンドプロジェクト(https://www.toray.co.jp/saiyou/fresh/project/project02.html)
また自動車業界もターゲットの一つであり、東洋紡は2017年度から2020年度にかけて総額100億円を投資しエアバック事業の生産能力を高めていこうとしています。その第一段階として、タイにエアバック用基布の繊維工場を新設しました。
稼げるの?
平均月給・年収
- 17年度:540万円
- 18年度:549万円
- 19年度:549万円
- 20年度:544万円
- 21年度:510万円
- 22年度:531万円
- 23年度:547万円
- 24年度:536万円
- 25年度:533万円
- 26年度:534万円
年収ラボ(https://nensyu-labo.com/gyousyu_seni.htm)
このように、平均年収はほぼ毎年横ばいの状態が続いています。
しかしながらこれは業界全体の平均年収であり、営業職や開発職の他に工場で作業をしている人たちなども全て含めた数値として出てきているのです。
一般的に総合職の方が年収が高いと言われており、人によっては年収が1000万円を超える人もいます。
会社別平均年収ランキング
- 1位:日清紡ホールディングス 756万円
- 2位:ダイワボウホールディングス 756万円
- 3位:クラレ 670万円
- 4位:帝人 662万円
- 5位:東レ 661万円
年収ラボ(https://nensyu-labo.com/gyousyu_seni.htm)
繊維業界の会社別年収ランキングはこのようになっています。
やはり、総合職が主な企業の方が年収が高くなっていますね。
会社別売上ランキング
- 1位:東レ 8,566億円
- 2位:帝人 3,949億円
- 3位:住江織物 912億円
- 4位:倉敷紡績 910億円
- 5位:東洋紡 768億円
海外進出に積極的な東レが国内では最高の売上高を誇っています。
東レは炭素繊維で世界的な評価を受けていることもあり、圧倒的と言えますね。
ホワイト企業3選
働きたい環境などは人それぞれだと思いますが、できればホワイト企業で働きたいですよね。
ここでは繊維業界でホワイト企業と呼ばれている会社を3つ紹介したいと思います。
①旭化成
とにかく福利厚生がしっかりしていると言われているのがこの旭化成です。
旭化成は次世代育成支援の取り組みが優秀な企業として厚生労働省から認定されています。
旭化成グループでは、仕事と介護の両立のための制度づくりに特に力を入れており、家族を介護するために通算1年間の休業や3年間に2回の介護短時間勤務を取得することが可能です。
また男性の育児休暇取得にも力を入れており、旭化成のHPによると
2017年度の育児休業制度の利用者は566名で、そのうち330名が男性、236名が女性でした。なお、子が生まれた男性の42%が育児休業を取得しています。http://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/csr/hr/balance.html
2017年度の社会全体での男性の育児休暇取得率が5%台なのを考えると、とてもすごい数字だということがわかります。
勤務条件や給与の面でも非常に高い評価を得ており、文句なしのホワイト企業と言えます。
②帝人
帝人ではこれまで要介護者や小学生までの子供を持つ社員に限っていた在宅勤務制度の対象者を本社勤務の全事務系従業員を皮切りに全ての社員に適用する取り組みをしています。
フレックスタイム制を導入していることや休日出勤がほとんどないこと、社員の有給休暇取得に積極的であることから社員のプライベート時間の確保に非常に協力的であると言えます。
③クラレ
クラレでは社員が特定の1週間、意識的・積極的に定時帰社する「ノー残業ウィーク」を導入しています。
また人材育成にも力を入れており、女性社員の採用人数増加、職域の拡大、職場への定着の3点に重点を置いて、主に管理職クラスの女性社員を対象とした研修制度も2017年度から実施しています。
また公表されている同社の離職率は、自己都合によるものが0.90%(2017年度)で、とても働きやすい環境であると言えますね。
志望動機【例文あり!】
商社の主な仕事内容は、生産者と販売者の間に立って取引を行うことです。総合商社では、扱う品目が多岐に渡り、高額な取引を行うこともあります。一方で専門商社では、その会社の専門とする分野で取引を行います。
ところが、繊維商社では間に立っての取引だけでなく、メーカー独自の機能やトレンドを作り出していく発信者的役割も持っている点で他の専門商社や総合商社と異なります。
よって繊維商社では、繊維と関連する全てのものや情報を収集、調達し、世界市場のトレンドに柔軟に対応する能力が必要とされています。
また開発職、研究職に就きたいと思っている方に必要とされているのは「常に技術開発の向上を求める積極性」や「既存の概念に囚われずに新しいものを考案する力」です。
ここでは例文を2つ紹介します。
ぜひ参考にしてみてください!
日本を牽引する繊維業界で世界中に新しいひらめきを提供することがしたいと思い貴社を志望致します。大学では、講義や実験によって繊維の特徴や構造について学ぶ機会が多く、素材に大変興味を持ちました。中でも、日本の繊維業の進化は世界でもトップレベルであり、それは多くの衣服を通して人々に貢献していることに感銘を受けました。中でも貴社は、衣服素材の進化において大変新しい素材を発表し続けており、ファストファッションブランドを通して世界中にその素材の素晴らしさを知らせました。私もそのような世界中の人々の日常に、新しく機能的な素材を提供し、貧しい国にも衛生面や価格面でも役に立てるような取り組みがしたいです。そのために、貴社に入社できました際には、人々の暮らしにと寄り添った素材作りの現場で多くの事を吸収し、そして自らの目線で素材による可能性を提案し、常に新しい風を吹かせていく存在でありたいと思います。(395文字)
志望動機の例文集めました! (http://志望動機例文.jp/kigyoubetu/seni/567)
私が貴社を志望した理由は、人々の生活を影から支える素材の分野で働くことによって、人々の生活の質の向上に貢献したいと思ったからです。私は学生時代、炭素繊維を研究していました。決して表舞台で活躍するような分野ではありませんでしたが、人工衛星やロケットなどに使用される特別な素材を開発することで、社会に貢献しているという実感を得ることができました。この経験を通して、私は素材の世界に興味をもつようになりました。私が素材の世界の中で貴社を選んだのは、「帝人グループは人間への深い理解と豊かな創造力でクォリティ・オブ・ライフの向上に努めます」という貴社の経営理念に共感したからです。人類の進歩に貢献するため常に歩み続ける貴社の研究にぜひ私も携わりたいと思うようになりました。私が貴社に入社できましたら、自分の能力や個性を十分に発揮し、革新と創造を胸に、人生のさまざまな喜び、つまり「生きていることの価値」の向上に努めてまいります。(410文字)
志望動機の例文集めました! (http://志望動機例文.jp/kigyoubetu/seni/567)
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重要ニュース
業界のニュースを知ることは就活の際にとても有利な武器になります。
ここでは国内の繊維産業に関するニュースを紹介しています。ぜひ参考にしてみてください!
京都と和歌山の繊維が連携 独自ブランドで海外へ
日本経済新聞によると、京都府と和歌山県の繊維産地が新たなビジネスを開発するスタートアップ的な動きを見せているということです。複数の組合が業態や商習慣の垣根を超えて連携し、生地の独自ブランドを設立して海外市場を目指すそうだ。
今回、「スタートアップ産業」を立ち上げたのは、京都プリント染色協同組合と紀州繊維工業協同組合、和歌山ニット商工業協同組合の3組合です。計画では和歌山で作った生地に、京都が得意とする繊細なプリントを施す予定です。
経済産業省によると、2016年の繊維工業の製品出荷額は約3兆8000億円。1996年に比べ、57.2%減少しており、これは人口減少による市場の縮小に加えて、単価の安い海外製品によるファストファッションの流入などの影響も大きいと言われています。
両産地で知恵を出し合って作った生地は「わこと」と名付けられ、来年にも海外での販売を目指しているそうです。
繊維業界はホワイト
繊維業界という名前だけ聞くと漠然としておりイメージを掴みにくいと思いますが、行っていることは他の業界とそう変わりはありません。
繊維業界は全体としてホワイトな傾向であり、年収もしっかりある業界となっています。また、各企業で社員が働きやすい環境作りを行っており、とても魅力的な業界ですね!
しかしながら、海外メーカーの発展や国内生産の減少などの問題も抱えており解決しなければならない課題もたくさんあります。
現状や課題を把握すること、今後の展開をしっかり見据えることが就活の成功への近道となります。