新卒・転職を問わず、面接試験の最後で決まりきったように聞かれる質問に「何か質問はありますか?」といういわゆる逆質問があります。
面接は終わったという意識で何となく「特にありません」とサラッと答えてしまいそうですが、今回は逆質問の意味や意図、答え方などを解説します。
数学検定1級保持者で東京大学工学部卒にもかかわらず、自身の就活に失敗し就職留年した経験から企業の人材戦略の道へ。
新卒の学生が一流企業に内定するための独自の方法論と、3年後離職率・OpenWorkでの評価・帝国データバンクの評点を用いた客観的視点から日夜ホワイト企業を研究。
研究内容を自社メディアで掲載したところ、就活生や親御様の間で話題となり、月間で35万PVを達成した。
現在も、塾生がカリキュラムを消化したものの、ホワイト企業の内定を1社も得られなければ授業料を全額返金という方針で、上位大学だけでなく、全国幅広い大学の学生の就活指導を行なっている。
「就職浪人からANAグループに内定した! 」「留年すれすれから日本IBMに内定! 」「指導を受けた次の日から大手企業の面接で落ちなくなった! 」など、喜びの声多数。
著書に「子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法」(日経BP社)がある。
逆質問の2つの目的
逆質問とは面接試験の最後に面接官に対して質問の機会を与えられるものです。
何気ない企業側からの親切な問いかけに見えますが、最後に質問が無いかという問いかけは不明点を無くしてスッキリさせるという意味合い以外に、企業に対して最後のアプローチのチャンスであるという意味もあります。
逆質問の内容は次の面接担当者や部門責任者、経営層にまで伝えられることもあるので、仕事内容や労働条件などの最終的な確認のタイミングであると同時に、それまで低調だったとしても、この逆質問のタイミングで一発逆転のチャンスがあります。
つまり、何気なく聞いたことが採否に大きく影響を及ぼすきっかけにもなり得るということです。
企業側はほぼ間違いなく逆質問を面接の最後に行いますが、そこには以下のような意図があります。
目的①経営理念や経営方針、社風との相性を確認する
逆質問では自由なテーマで受験者に話してもらうため受験者の素の考え方が表れますが、受けている会社が規律に厳しい伝統的な会社の場合、「上司・部下の関係はフランクですか?」と聞くと「うちの会社には向かないタイプだな」という印象を与えてしまいます。
社風が自分に合わないと仕事もやりにくくなりますが、逆に仕事そのものに強い志望動機が無くても社風が自分に合っていると毎日の会社生活が楽です。
実際の社風はホームページや会社案内では把握しづらいものなので応募の際や一次面接の段階で人事担当者に聞いてみるのが良いでしょう。
面接の最後の逆質問で聞くのは、ある意味で「賭け」になってしまいます。
目的②コミュニケーション能力やマナーをチェック
面接の質問は、通常、面接官から受験者に対して一方的に投げかけられますが、逆質問の場合は受験者から自発的に発言しなくてはならないので、きちんと自分の考えを人に伝え、受け答えができるかなど、反対の立場からコミュニケーション能力を判断されます。
会社ではチームで仕事をしていくので、能力や実績はあってもチーム内でのコミュニケーションが取れない人は会社には向きません。
面接官はあなたの発言の仕方から「この人をうちの会社に入れたら皆と上手くやってくれるだろうか?」という視点でも見ているということです。
効果的な5つの質問
なぜこの質問をしたのかという理由も述べると面接官は納得しやすいので、ただ漫然と質問するだけでなく「入社前に準備したいので」とか「覚悟をしておきたいので」というような理由を明確にして話すと面接官も好意的に捉えてくれます。
また、逆質問にはいくつかの成功パターンがあるので、やみくもに思いつきで質問するより以下のような質問を中心に準備すると良いでしょう。
①入社を前提にした前向きな質問
「入社までに取っておくべき資格や読んでおくべき本はありますか?」など、入社を前提に準備しておくことなどを尋ねると受験者の誠実さや前向きな姿勢、本気度を伝えられると同時にあなたを採用する雰囲気を作る効果も期待できます。
人間は先のスケジュールの話をしていると本当に実現したくなってくるものなので、逆質問だけでなく通常の質問でも全てにおいて将来を前提に話すと前向きな空気が相手に伝わっていきます。
また、「私が入社出来たとしたらですが、〇〇営業部の戦略について教えてください。」という質問で入社後の部署の実務面に関心を持っていることを伝えれば、入社の意思が強いことをイメージさせられます。
②入社後の目標を述べる
入社後は「〇〇万円の売上を達成したい」とか「コストを〇〇%ダウン出来るようにしたい」という具体的な目標を伝えることで熱意が伝わりますが、あまりに大き過ぎることを言うのは禁物です。
あまりにも根拠のない目標は不信感につながるので、具体的な数字を掲げるなど努力目標に留めるのが無難です。
また、「〇〇職で実績を出した後、△△職にもチャレンジしてみたいと考えていますが可能ですか?」という質問をすると、入社した後のビジョンを持っていることが伝わり、実現可能かは別として積極性を大いに評価されるでしょう。
受験者に対して複数の部署で採用を検討している場合、採用の可能性を広げる効果もあります。
③覚悟を見せる
仕事によってはキツイことも受け入れなくてはならないことがあるので、「入社するに当たってこれだけは覚悟しておいた方がよいということはありますか?」という質問をすることで、それを自ら受け入れようとする態度に好感を持たれ、入社に際して強い決意を持っていると伝えられます。
就職には何らかのハードルもあるので自分の中で覚悟を決める良いきっかけにもなるでしょう。
④ポジティブな個人的意見を問う質問
面接官に対する個人的な質問は慎重にする必要がありますが、「〇〇様の、この会社に入って良かったと思える点を教えてください。」という質問からは入社に対するプラスイメージを持ちたいという受験者の積極性が感じられます。
面接官が良かったと思える点と受験者の思いに共通点がある場合、共感が生まれ、一気に採用に傾くことが期待できるので、まさにキラークエスチョンとも言える一手です。
⑤経営理念を問う質問
会社の経営理念の理解は入社に際して最も大切なことですが、「御社の経営理念のうち、〇〇は△△という理解でよろしいでしょうか?」という質問で、その細部まで理解しようとする姿勢が伝わり、特に経営者層に高い評価を受けます。
6つのNG質問
一般的に逆質問のシーンで聞くべきでない質問内容をご紹介します。
①資料で分かることを聞く
いくらあなたが優秀でも、会社のパンフレットやホームページに載っていることを聞くのはその企業への関心が低いと自ら言っているようなものなので、それだけで不合格になることも十分にあり得ます。
事前に調べられることは一通り調べ、質問点を用意しておきましょう。
②説明済みのことを聞く
面接の前に会社や仕事の説明を受けますが、その際に聞いた内容を逆質問で聞き直すのは大変失礼で、人の話を聞かないという印象を与えてしまうと合格は難しくなります。
逆に、説明内容を元に詳しい内容を聞くと「私の説明を真剣に聞いてくれているな。この子は伸びそうだな。」という印象を与えられるので実績が乏しくても好感を持たれます。
③細かい待遇面
給与や役職、残業、休日などの情報はとても大切ですが、非常にデリケートな内容なのであまりしつこく聞くと仕事そのものより報酬目当てという印象を持たれかねません。
そもそも、最終面接は経営者や部門の責任者などの決裁者が担当するので、その場でそんなことを聞かれても相手は「今さら条件面を言われても困る」という気持ちになるので、お互いに後々嫌な思いをしないためにも条件面についてはなるべく応募の早い段階で確認しておくほうが良いでしょう。
④答えにくいこと
相手が人事担当者の場合、「本社の研究開発部門で〇〇の研究もやってみたいのですが、研究成果はどのくらい上がっているのでしょうか?」などと聞いても、職種の細かなところまでは知識を持っていませんし、「御社の将来性についてどう思われますか?」などと漠然と大きなことを聞かれても回答に困ってしまいます。
面接官は普通、初期段階では人事担当者、二次面接では部署の代表者、最終面接では経営者が務めますが、相手の立場や知識レベルを考えながら質問しましょう。
相手の立場を考えないまま唐突な質問をした場合、相手が困るだけでなく「TPOが分かっていない人だな」という印象を与えてしまうので、どんな立場の人なのかを確認して相手の立場に応じた逆質問をしましょう。
⑤ネガティブな個人的意見を問う質問
面接官に個人的な考えを聞くケースもありますが、その場合はネガティブなテーマは避けましょう。
例えば、採用を前提として面接している会社の面接官が会社のネガティブさを伝えるはずがないので、「あなた個人としてはこの会社はどう思いますか? 大丈夫ですか?」などという質問はナンセンスです。
個人的な質問をする場合は「あなた個人として感じている仕事のやりがいはどんなことですか?」などのプラスイメージが湧くものにすれば、面接官も受験者が前向きに考えていることが分かりますし、面接官としても自分の体験を通してさらに受験者のプラスイメージを広げたいと考えるようになるので、企業・受験者双方に合格に向けた良い雰囲気を生んでくれます。
⑥面接で話した内容を再度質問する
面接中に既に解決したことを再度聞き直すのはタブーですが、面接の最中に回答が出てしまう場合も多いので逆質問は少なくとも5個は用意しておきましょう。
複数ジャンルの質問を用意しておくと安心です。
5つのNGフレーズ
①特にありません。
本当に質問が無い場合もありますが、面接官は会社に対するアピールの時間を与えているので、何らかの前向きなイメージを発信できる質問や感想を準備しておきましょう。
「ぜひ、よろしくお願いいたします」という一言だけでも必ず発言するようにしましょう。
②御社の強みについて教えてください。
逆質問は面接の最後にするものなので、面接の終わりには当然その会社の良さは十分分かっていなければなりませんが、これでは受験者が会社のことを全然理解していないと自白しているようなものなので、このような質問をするとまず合格はあり得ません。
③今後、御社の〇〇事業部の取るべき戦略は何ですか?
相手を困らせるようなメンツを潰すような質問は好ましくありませんが、これは面接官にとって答えにくい質問であり、人事担当者はもちろん、経営層に対しても詰問している印象を与えるのでマイナスイメージで終わってしまいます。
④御社はA社に比べて製品のサポート体制が弱いと思うのですが、いかがですか?
どんな会社にも良くない面はありますが、それを正面切って指摘されて喜ぶ会社はありません。
もし、その点が気になる場合も、「私が入社出来たらサポート体制を〇〇のようにして改善したいと思っています」と述べるとプラスイメージに転換できますが、基本的には会社のマイナスイメージを最後に持ち出すのは好ましくありません。
⑤御社の〇〇についての経営方針は素晴らしいと思います。
会社を褒めることは重要ですが、根拠やどう素晴らしいのかという自分の考えが無い場合、単なるリップサービスをしているだけと受け取られ、逆にマイナスイメージになってしまいます。
相手別のポイント
人事担当者
人事担当者は応募の際や一次面接で最初に会う相手で、基本的に自分の能力や実績、志望動機全般を分かってもらうことがポイントです。
人事担当者は応募書類や面接で会った印象などを二次面接以降の役職者に伝えていくので、伝えておきたい内容は人事担当者には伝え切っておきましょう。
また、待遇面に関しては、この段階で出来るだけ不明点はスッキリさせておきましょう。
早めに勤務条件を確認しておけば、その後の決裁者の面接で細かなお金のことを聞かなくても済みます。
部署の上司
将来上司になる人に対しては具体的に仕事の役に立つテクニカルスキルを分かってもらいましょう。
自分に不足している能力や準備していた方が良いことなどを具体的に尋ねると意欲の高さを示せます。
また、現在のその部署の仕事の状況などを聞き、その中で自分の能力が発揮できる点を発見できれば新たなPRになります。
特にその職場で困っていることを解決できる能力が受験者にあると分かれば一気に合格に前進するので攻撃的な逆質問の好例と言えるでしょう。
役員、社長
経営者層はあまり技術的なことは分からず、どちらかというと大きなビジョン的な話を好みます。
「御社の〇〇戦略について非常に興味を持っています」や「御社の○○に対する真摯な取り組みに共感しました」というような会社の経営理念や戦略についての質問や感想が向いていると言えます。
注意すべき4つのポイント
逆質問の内容についての色々なポイントを押えてきましたが、質問する受験者の態度として注意すべき点を解説します。
①メモを準備
逆質問する場合にはきちんとメモを取りましょう。
この動作だけでも十分熱意を伝えられますが、内容によっては記録されては困る場合もあるので、必ず面接官に許可を得て記録しましょう。
この許可のための応答も好感を得るポイントになります。
②面接官の表情に注意
受験者から質問する時は質問を受ける面接官の表情に気をつけましょう。
相手が首を傾げたり表情を曇らせたりしているときは質問内容が理解できなかったり答えにくい質問だったりするので別の平易な表現で説明しましょう。
③専門用語は使い方を慎重に
仕事上の深い内容を逆質問するときなどは専門用語が出てきたりしますが、専門用語を多用したがる人はTPOを弁えない人だという印象になるので、面接官の立場や知識レベルを考慮し、相手が人事担当者の場合や経営者の場合はあまり難しい専門用語は使わないようにしましょう。
反対に面接官が部署の責任者だったり実務担当者だったりした場合は「仕事に必要な専門知識は持っている」ということを知ってもらわなくてはならないので必要に応じて専門用語が必要になります。
勿論、必要以上に専門用語を使い過ぎると知識を誇示しているようにも見え「使いにくそうな部下」という印象を持たれかねないので、その場合も必要以上の多用は禁物です。
④最後にお礼の言葉を
逆質問が終わると面接試験が終わりますが、人事担当者は応募から書類審査、筆記試験、一次面接と多くの手間をかけています。
その苦労に報いる気持ちで「本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。」とお礼を述べて深くお辞儀をし、面接室を出る時、ドアの外から最後の黙礼をしましょう。
最後の黙礼はあなたの誠実さを相手の心に刻みます。
それまでの面接試験で十分に自己PRが済んでいる場合は無理してギクシャクした質問をするより、「特にありません。ぜひ御社で頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。」とシンプルに入社の意思を力強く伝えましょう。
また、それまでの面接が緊張のあまり上手くいかなかったときは「緊張し過ぎて上手く話せませんでしたが、一生懸命頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。」と正直な感想に加えて決意を述べ、素直な自分を正直に表すのも良いでしょう。
企業は面接を通じてあなたの人柄も見た上で一緒に働きたい相手かを判断しようとしますが、人前でスムーズに話せなかったとしても誠実かつ正直に自分を表現できれば仲間として受け入れたいという気持ちになってもらえます。
逆質問はきちんと用意しよう
面接での逆質問の意味や回答の仕方などについて解説してきましたが、新卒採用では一定の能力がある若者を一括採用するので、採用後は時間をかけて教育し戦力化していく分、面接試験もじっくり行われます。
本当に自社の戦力になってくれるか詳細に分析して結論を出すので面接官は逆質問で何を話すかに注目していますが、逆質問タイムは「何を言おうか?」と難しく考えるより合格に向けて与えられたチャンスタイムと捉えましょう。
事前の企業研究に基づいて周到な準備をし、その内容を熱意を込めて伝えることが大切です。
ぬかりのない対策をすることで最高の内定を勝ち取ってくださいね。