ここでは電力業界の動向を示すポイントを4つ紹介する。
①安定した電力供給
原子力発電所の稼働が完璧でない以上、火力発電所に大きな負担がかかっているという現実がある。
実際に資源エネルギー庁の「今後の電力システムの主な課題について」によると、「高い安全性を持ったエネルギーの安定供給」は今後の電力業界の大きな課題とも言われている。
そのために風力や地熱、太陽光などの自然エネルギーを使った発電にどれだけ切り替えていけるかが問題になっているが、自然エネルギーはエネルギー自体は無料なものの設備投資に費用がかかり、供給も安定しないためその改善が望まれている。
②電力の小売自由化
2016年からはじまった電力の小売自由化は電力業界の中小企業だけでなく、他の業種の企業もどんどん参入してくるという事態を引き起こしている。
そもそも日本では従来、居住地域に合わせて決められた電力会社からしか電気を買うことができなかった。
例えば東京都に住んでいれば東京電力と契約して電気を購入、大阪府に住んでいればは関西電力と契約といった具合である。
この状況が電力自由化によって、決められた電気事業者以外からも電気を購入できるようになったのだ。
これにより、東京在住の人が関西電力から電気を買うことができるようになったということである。
また、電力自由化以前は、電気事業を運営できる企業が、東京電力、関西電力、東北電力、北海道電力、九州電力といった地域の電力会社に限定されていた。
このような制約も電力自由化によって撤廃され、ガス・石油会社、通信会社、鉄道会社、商社、ハウスメーカーなど、さまざまな企業が電気事業に産することができるようになったのである。
ちなみに、電力自由化後に新たに電力販売に参入した企業は、一般的に「新電力」と呼ばれている。
つまり、電力自由化を理解するためには、「消費者には電気事業者を選ぶ自由が、企業には電気事業に参入する自由がそれぞれ与えられる」というイメージを持てば不足はないであろう。
一方この事情今日は、需要者としては少しでも安く電力を買えるという選択肢が増える結果となっているが、これまでの10電力会社からすれば、どう対応していくかが問われる場面である。
③新電力に対する法整備
動向②で紹介した新電力の法整備に関しても解決するべき課題がある。
新電力事業に関わる制度設計は、主に「電力システム改革小委員会」により検討されているが、現状ではビジネスが始まる前ということもあり、不確定事項が多いことが現状である。
一方、適切な情報を収集し、制度設計をビジネスに取り入れることにより、収益拡大の機会創出に繋がると考えられる。
④原子力発電問題
原子力発電所の事故によって原子力発電所を中心とした発電計画は大きく見直されている。
そもそも現在原子力の代わりに安定して発電する方法は火力発電しかない。
しかしその燃料の多くは輸入に頼っており、円安や原材料費の高騰によって発電コストは高くなっているのが現状だ。
例えば、
電気新聞の記事によると、四国、沖縄を除く大手電力8社の2022年度中間連結決算では期ずれの影響を除いた実力ベースの経常損益では東京を除く7社が黒字を確保している。
しかも7社のうち3社は増益を実現したが、期ずれの影響を加えた上での経常損益ベースでは8社とも赤字だった。
このような厳しい状況の中、原子力発電の需要とそれに対する国民の理解が乖離してることは電力業界における課題である。