ここでは、自動車業界を取り巻く現状について4点を解説する。
①次世代自動車の台頭
ここでは、今後台頭する自動車の種類について紹介する。
HV(ハイブリッド車)
ハイブリッド車は、動力源に「電気」と「ガソリン」を組み合わせて走行する車のことである。
ハイブリッド車は速度が低い時は電気で動くモーターを使って走行し、燃費の効率が良い速度になった時には、ガソリンで動くエンジンに切り替え走行をするという仕組みだ。
この仕組みにより、速度が低い時に燃費の効率が悪くなるという一般的なガソリン車のエンジン性質を補う。 そのため、従来のガソリン車より燃費の効率が良くなり、CO2や排気ガスの量を抑えることができるメリットがある。
一方、デメリットとしては、バッテリーの寿命が短くなってしまうことがある。
EV(電気自動車)
電気自動車とは、電気をエネルギーとして走る車のことであり、EV(Electric Vehcle)とも呼ばれている。
EVは「電気をエネルギーとするクルマ」なので、ハイブリッドカーなど「エネルギーの一部として電気を使うクルマ」も含むが、一般的には「電気だけをエネルギーとするクルマ」を指すことが多い。
EVとハイブリッド車、ガソリン車との最も大きな違いは、ガソリンやディーゼルなどの燃料を全く使用しないことだ。ハイブリッド車は電気とガソリンの両方を使用するが、電気自動車はガソリンを使用しない。
PHV(プラグインハイブリッド車)
PHV(プラグインハイブリッド車)とは、コンセントから差込プラグを用いて、外部電源から直接バッテリーに充電することができるハイブリッド車である。
走行時にCO2や排気ガスを出さないという電気自動車のメリットと、必要に応じてモーターとエンジンを併用し駆動できる、ハイブリッド自動車の長所を併せ持っている。
PHEV(PHV・プラグインハイブリッドカー)は維持費は従来の自動車より割安だが、販売価格は割高である。
一方で、取得時にエコカー補助金を受けられたり、税金の優遇制度がありますのでこれらを活用して購入価格を下げることができる。
コネクテッドカー
コネクテッドカーとは、ICT端末としての機能を有する自動車のことである。
車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、情報を集積・分析することで、付加価値を創出することができる。
具体的には、事故時に自動的に緊急通報を行うシステムや、走行実績に応じて保険料が変動するテレマティクス保険、盗難時に車両の位置を追跡するシステムなどがが実用化されつつある。
自動運転車
自動運転車とは、
運転操作が自動化される車のことである。ドライバーが何もせずとも目的地に到着することができる。
自動運転システムには「分析や認識」「行動決定」「機構の制御」「情報収集」の機能があり、渋滞や事故を回避するだけでなくCO₂の削減につながる。
日本では、自動運転車はSAE(国際自動車技術会)での定義に合わせ、搭載される技術により自動運転車をレベル0からレベル5までにレベル分けがされている。
自動運転車のレベル区分では、レベル0は自動運転技術が無しの状態、レベル1が運転支援、レベル2が部分的な運転自動化と定義され、レベル3で条件付きで運転自動化、レベル 4で高度運転自動化、レベル5 では完全自動運転化と定義されている。
②AIを活用した自動運転の実現
これまで消費者のニーズとして考えられることは「走ることへの爽快感」「車を持つことがステータス」などであったが、
近年はそれに加え「安全性への追求」も求められている。 それを実現させるための手段としてAIの活用が増加している。これにより、渋滞の回避や高齢者の対策、交通事故の減少につながるのだ。
実際に、
公益財団法人自動車技術会では自動運転AIチャレンジという大会を通し、若手技術者の発掘育成の機会を創出している。
この大会は、CASE、MaaSなどの新たな技術領域において、これからの自動車業界を牽引する技術者の発掘育成のための新たな取り組みとして実施されてきた。
これらの取り組みにより、今後はより安全で快適な自動運転技術がAIにより可能になるであろう。
③CO₂排出量削減によるEV・PHVの本格化
CarMeの記事によると、イギリス、フランスでは2040年にガソリン・ディーゼル車の新車販売を廃止する方針を打ち出し、ノルウェーは2025年に打ち出すことを発表している。
このように欧州を中心にCO₂排出量削減などの環境政策を打ち出しており、日本でもエコカー減税などが行われていることからEV・PHVが本格的に導入されることが予想される。
④新興国の爆発的な需要増大
先進国では、環境政策に備えた自動車を販売する動きが出ているため、従来のガソリン・ディーゼル車の需要は減少している。
逆に、
新興国では急激な経済発展により生活水準が上昇し、自動車自体の需要は増加している。 日本総研が2020年に発表した
アジア自動車需要の短期・長期展望 によると、今後30 年でアジアの自動車市場は現在の3 倍程度まで拡大すると試算されている。2030 年までは特に中国での市場発達が進み、その後はインドやASEAN が拡大ペースを速める。
中でもインドは2050 年には現在の10 倍以上の規模となり、年間販売5,000 万台が視野に入ってくると見られている。
そのため、各国の自動車メーカーは新興国への販売網を拡大しようとする動きが進むであろう。
⑤低価格で買える自動車の実現
上記のような現状により、各自動車メーカーは「安全で、環境に良い自動車を低価格で提供すること」を実現しようと、技術革新に取り組んでいる。
実際に日産自動車と三菱自動車工業は、両社共同プロジェクトで企画・開発を進めてきた軽自動車の新型バッテリEVの開発をしている。
このEVは補助金を活用すれば購入価格が約200万円ほどと低価格帯を実現している。
メーカー各社間ではこのような技術革新競争は今後激しくなるであろう。